本物を求めることは素晴らしいことですが、
時には偽物が本物の代わりになることもあります。
私は果物のイチゴがさほど好きではありませんが、「イチゴ味」は大好きです。
多くの人がアマゾンのジャングルを実際に探検をすることを好まないでしょうが、ディズニーランドにある「ジャングル クルーズ」が嫌いな人はあまりいないでしょう。
「本物」と「偽物」は、その単語のイメージだけから察すると 完全に180度対局にあるもののように感じますが、それぞれに良し悪しがあり 決して正反対の関係性ではありません。
偽物を愛すること。
時として これもまた、素晴らしいことです。
本物であろうが偽物であろうが、そこに愛があるのか否か。
それだけが「答え」な気がします。
いやぁ、暑苦しい。
パラブーツのシメイ・クロコ型押し(ビショップ別注)
BShop別注のパラブーツのこの「シメイ(Chimey)」という靴は、アッパーにクロコ型押しのカーフレザーが使われた、結局は牛革の靴です。
今回はこのパラブーツのシメイ(クロコ型押し)について書いていきます。
・参考記事:通常版のシメイについてはコチラからどうぞ。

「クロコ型押し」というワード
革が好きな人や革にこだわりがある人なら敏感な反応を示す「クロコ型押し」という単語。
クロコ型押しレザーとは、ワニ革特有の腑の型押し加工が施されているレザー(たいていは牛革)なので 当然ながら本物のクロコレザー(ワニ革)ではありません。
鞣された牛のスムースレザーに 腑の柄をスタンプのように押し当ててエンボス加工をさせているに過ぎません。
つまりは「ニセモノ」なわけで、本物志向を追求するならば 絶対に避けるべき素材。
しかしこのたび、パラブーツではあまり見かけないクロコ調のデザインに惹かれてしまい、このクロコ型押しの靴を買ってしまいましたとさ(トホホ)。

けっこうなパワー(いかつさ?)を感じるデザインです。
そういえば、
ツッコミこそ入れませんでしたが、購入した店舗の販売員が「これ、クロコなんですよ。」と堂々と語ってくれました。
無邪気で良いことなのですが、個人的にはそのあたりはきちんと説明してもらいたい…。
カレー味のう●こを、「これ、カレーなんですよ。」と堂々と販売しているようなものなのでね。
型押しクロコの表情
とはいえ、型押し商品の中では本作は完成度が高いです。
一見すると本物のクロコ革(ワニ革)のように見え、安っぽさは皆無。
特に 細かい丸腑の再現性は非常にリアルです。
本物のクロコダイルレザーには(もちろん)及ばないものの、それ相応の満足感があります。
すごいぞ、加工技術!

反面、本物のクロコダイルのように見える一面があるものの、場所によってはやはり型押し(=フェイク)だなと感じざるを得ない箇所もあります。
腑の面が広い箇所などはどうしても立体感に欠けるため、型押し加工っぽさが残ります(仕方ない)。

箇所によって程度の差はあれど、全体的にはとても満足できるクロコ感に仕上がっています。
加工技術も日進月歩、日々進化しているのでしょうね。
個人的にはリアル志向派なので、「フェイクファー」やら「フェイクレザー(合成皮革)」はもちろん、「●●風」とか「●●調」のような商品には否定的で 全力でスルーしているタイプの人間なのですが、今回は加工技術の進化を体感/体現することができ、勉強になりました。
(否定ばかりしていてもダメですからね。)
クロコ調×イミテーション仕様
ここまで、クロコ型押し(=ワニ革フェイク)について触れてきましたが、
このシメイという靴にはもうひとつのフェイク要素があります。
この靴はデッキシューズのデザインをしていますが、なにを隠そう デッキシューズ風なデザインをしているだけで、デッキシューズではありません。
デッキシューズの特徴であるサイドに通されたシューレースがイミテーション仕様。
つまり、ニセモノです。

このイミテーションのシューレースについては別記事に詳しく書いているので、気になる方はこちらをどうぞ。
・参考記事:パラブーツのシメイ「デッキシューズのようなディテール」。
・クロコ調だが、実際にはクロコ革ではない
・デッキシューズっぽいが、実際にはデッキシューズの機能はない
デザインばかりが先行し、蓋を開けてみると実際にはフェイクだらけな仕様のこのシューズ。
うんうん。けれど、こういうの嫌いではないです。
「偽」は必ずしも「悪」ではないのです。
製法
アッパーとソールの縫い付けはノルウェイジャン製法。
すくい縫いの白い糸が見えるのが特徴で、デザインにも一役買っています。

・クロコレザー調のアッパー
・分厚めのソール(ジャンヌソール)
・ノルウェイジャン製法
この3つの特徴から、ボリュームが生まれ かつ デザイン主張のある靴に仕上がっているので 合わせる服は選ぶ必要がありそうです。できるだけシンプルに。
ミスると昭和の反社会的勢力のチンピラのごとく、ギラギラしてしまうこと請け合い。
(それもまた乙かな。かな?)

ソール
ソールはパラブーツ オリジナルのジャンヌソール(JANNU SOLE)です。
トレッキングなどにも使える頑丈なソールですが 適度なクッション性があり、履き心地は良好。

パラブーツは自社製のソールを使用することでも有名なブランドです。
デッキシューズを彷彿とさせるアッパーデザインに、トレッキング要素を垣間見ることができるジャンヌソールの組み合わせ。
このコンビネーションだけでも面白いのですが、
本作はアッパーの素材がクロコ調ということで さらにごちゃ混ぜ感がすごいです。
抹茶 クリーム フラペチーノにチョコレートチップを追加するぐらいのミックス度合いでしょう。
シューレース(靴紐)
シューレース(靴紐)は、「レザー製」と「コットン製」の2種類が付いています。

コットン製のシューレースに付け替えてみると、こんな感じです。
↓


良い意味でワイルドさが欠け消され、少しドレス顔になりますね。
あと、レースホールのハトメの色も通常版シメイとは異なるカラーデザインになっています。
細かい箇所ですが、別注ならではの違いを楽しめて良いですね。

クロコ模様との相性も良いです。
その他ギャラリー
さ。
一通りザッと書いたので、最後にその他のディテール部分の写真をサクッと載せておきます。





まとめ
まとめです。
今回は Bshop別注のパラブーツ、シメイ(クロコ型押し)について書きました。
別注商品らしい面白い靴です。
クロコ調の型押し加工は一見すると本物のクロコダイルと見間違えるレベルの出来栄え。
ニセモノなわけですが、手入れも楽そうですし概ね満足です。
レザーとしての希少性が特にないため 通常版と値段もほぼ変わりませんし(2,000円高いだけ)、手軽にエキゾチックレザーの靴を疑似体験できる点ではとても優秀。
無論、本物には敵わないかもしれませんがフェイク品がダメということではありません。
視野は広く、柔軟に。
「偽」は「悪」ではありません。
裏を返せば、
「真」が「善」でもないのです。

(完)
スペック
ブランド:Paraboot(パラブーツ)
モデル名:CHIMEY(シメイ)/Bshop別注モデル
型番 :200850
カラー :NOIR(ブラック)
アッパー:牛革(クロコ型押し)
ソール :JANNU SOLE(ゴム底)
製法 :ノルウェイジャン製法
原産国 :フランス
価格 :68,000JPY(plus tax)