知っている人は知っている。
知らない人は知らない。
今回はエンダースキーマのmanual industrial productsシリーズより、レザースニーカー「mip-22」について書きます。
エンダースキーマ(Hender Scheme)は、日本人デザイナー・柏崎亮氏が手掛けるブランド。
同ブランドのコンセプト(※1)は個人的には「???」なのでコメントは控えますが、
その点は置いておいて、アイテムそのものは非常に素晴らしいです。
ファッション好きの間ではすでに周知のブランドですが、改めてアイテムの良さを紹介します。
私自身、3年程前(2019年頃)に同ブランドのスニーカーを所有していましたが、訳があって一度処分してしまった(※2)ため、買い直しでの今回に至ります。
では、早速 紹介。
エンダースキーマのレザースニーカー
全容
紹介するのは、エンダースキーマのmanual industrial productsシリーズ(略称・mipシリーズ)より、
ナイキ(NIKE)の名作スニーカー「エアフォース1」をオマージュしたレザーシューズ、「manual industrial products 22 (品番:mip-22)」です。
エンダースキーマの「マニュアル インダストリアル プロダクツ」とは、誰もが一度は目にしたことのある”あの靴”をレザーで再現させ、新たな解釈を提案するというもの(だと思っています)。
アッパーはもちろん、ライニングやソール、シューレースに至るまで すべてレザーで仕立てられています。
説明不要のナイキの定番スニーカーをレザーで再現するプロダクト魂は「すごい!素晴らしい!」のひとこと(ふたことか)。
本家のデザインとほぼ同じように作り込まれており、眺めているだけでもワクワクする、そんなアイテムです。
参考までに、本家(=NIKE)のエアフォース1はこちら↓
ぐるりと一周 観察しても、ナイキのエアフォース1のデザイン そのもの。
しかし、履くと意外にも「ただの黒い靴」にしか見えません(けなしているわけではない)。
が、それこそが私のお気に入りポイントです。
革質
アッパーの革には、カウレザー(成牛の革)が使用されています。
お世辞にも、カーフレザー(子牛の革)のような「上質な革」とは言えませんが、あまり気にせずにガツガツと履いてエイジングを楽しめると思えば、こういった革も面白いですね。
厚めのカウレザーで作るからこそ、カジュアルでストリート感のある”スニーカーの印象”を崩すことなく表現できるのかもしれません。
(もちろん、原価と定価設定のバランスもあるのでしょう。)
ちなみに、ライニング(内側)はピッグスキン(豚革)です。
クッション入りで足あたりは柔らかく、履き心地は良好。
贋作ではなくオマージュ
「贋作(偽物、パチモン)」と「オマージュ」との境界線がどこにあるのかを論ずることは簡単なことではありませんが、エンダースキーマのコレは間違いなく「オマージュ」であり、贋作とは全くの別物です。
なぜかというと、エンダースキーマのアイテムにはきちんとしたオリジナリティが存在しているからです。
その代表的なパーツがソールでしょう。
アッパーと同様に ソールまでもがレザーで作られており、革靴としての”におい” を強く感じ取ることができます。
スニーカーといえば、グリップ力の高いラバーソールが特徴ですが、そのパーツをあえてレザーで仕上げることで ウィットに富んだオリジナリティが生まれています。
オリジナリティが存在している理由として もう1点。
商標や著作権・肖像権などの権利関係の問題から察して 当たり前のことですが、エンダースキーマのこの靴にはナイキのロゴはどこにも入っていません。
これも、贋作ではなくオマージュであることの実例のひとつと言えます。
ただし、
「マークが入っていなければ、真似してもOK」というものでもないので、このあたりはけっこうグレーゾーンな気がします。
それでも このギリギリを攻めるワクワク感、好きです。
あとは、ナイキとはそもそもアプローチの仕方が違うので、そういった意味でも決して贋作ではないと言えるでしょう。
エンダースキーマはあくまでも「革製品」にこだわり、手間のかかるハンドメイドのプロダクト。
ナイキはハイテク素材を使った大量生産のプロダクト。
180度異なると言っても過言ではないアプローチ方法ですが、多角度的に物事を見たときに交わる部分があるからこそ このようなオマージュ製品も生まれてくるわけです。
単なる靴(機能面)としてのアイテムだけではなく、色々と考えさせられる興味深いアイテムです。
これぞ、ファッション。
替え紐
最後に、靴紐について。
購入時はレザー製のシューレースがセッティングされていますが、コットン製の平紐も付属品として入っています。
用途やシーン、スタイリングによって付け替えができるので、何気ないように思えて案外 重宝します。
コットン製の平紐に替えると、”ナイキな雰囲気”が強まります。
このあたりは好みが分かれるところでしょう。
まとめ
今回は、私物の中からエンダースキーマのレザースニーカー、「manual industrial products 22」(mip-22)を紹介しました。
紹介文の中でも書いたので繰り返しになりますが、
私がエンダースキーマのオマージュシリーズを高く評価している理由は、製品の再現性とオリジナル性を生み出していること、そして何よりも 履くとただの黒い靴にしか見えない(※3)という点にあります。
遠目から見ると特徴のないただの黒い靴。
ちょっと近づいて見てもただの黒い靴。
もっと近づいて見ると、
「ナイキかな?でもマークが無いし違うよな。」という黒い靴。
かなり近づいて見ると、
「なるほど、ナイキのオマージュなのか。」という靴。
このように 話のネタになる楽しさを持った靴です。
ナイキのブランドロゴ(スウッシュ)が入っていないことによって、ナイキとはまた別の魅力を持った不思議なオーラが漂ってきます。
裏を返せば、ブランドロゴが持つ影響力、訴求力、誘引力といったものが、普段いかに意味を成しているのかを逆説的に具現化して証明しているアイテムだとも言えます。
デザインをただパクっただけでは成し得ることができない、素晴らしいアイデアだと思います。
おしまい。
注釈
(※1)同ブランドのコンセプト
エンダースキーマの公式ホームページには、ブランドについて以下のように書かれています。
<身体的、生物学的に性差を示すセックスに対して、ジェンダーとは、社会的、文化的な性差を意味する。Hender Scheme(エンダースキーマ)ではセックスによる性差を尊重しながらも、身なりにおいてジェンダーを介することなく、人間の経験や環境によって構造化されたジェンダースキーマを超越した概念を提唱する。>
ふむふむ。面白いアプローチです。が、これ以上はノーコメントです。
(※2)訳があって一度処分してしまった
前回所有していたアイテムはナイキの「エアフォース1 ハイカット」をオマージュした「mip-01」というモデル(下写真)。
ハイカット仕様は脱着がとてもめんどくさく、かつ、サイズのフィッティングも難しかったです(所感です)。ローカット靴よりも革の面積が広く、靴自体にもボリュームもあるため、在感があり、アイテムそのものは気に入っていましたが泣く泣く処分しました。ちなみに所有していたカラーはナチュラルではなくブラックです。
(※3)履くとただの黒い靴にしか見えない
エンダースキーマの靴は、主にナチュラルカラーとブラックの2色展開です。
私は黒色の靴ばかりを買い揃える性分なので この靴も黒を買いましたが、一般に認知されているエンダースキーマの靴の色はナチュラルカラーです。実際、ブランド自身もナチュラルカラーを推しています。ぱっと見で「革製品だと分かること」「オマージュしたものであると分かること」、そういった存在感はナチュラルカラーの方が味わえますし、エイジングに関してもナチュラルカラーの方が楽しめるでしょう(着実にアメ色に変化していくので)。
なので、「真っ黒い靴にしか見えない」という私の野暮な感想は、ブラックのオマージュシリーズを履いたときにしか起こり得ません。ナチュラルカラーだと”ナチュラル”というカラー名称に反して 良くも悪くも非常に目立ちます。どちらを選ぶかは好みの問題で、どちらも素晴らしいです。
スペック
- ブランド :Hender Scheme(エンダースキーマ)
- ライン :manual industrial products(マニュアル・インダストリアル・プロダクツ)
- モデル名 :manual industrial products 22
- 型番 :mip-22
- カラー :ブラック
- アッパー :牛革
- ソール :牛革
- ライニング:豚革
- 原産国 :日本
- 価格 :58,000JPY(plus tax)